オフェブ®における日本と海外のSSc-ILD診断の流れについて

SSc-ILD診断の流れ
SScでは、皮膚をはじめとして肺や消化管、心臓、腎臓、筋・骨格など多くの臓器に線維化や血管障害が生じ、多彩な症状が現れます。SSc診断の際には、診断基準に基づいてSScの確定診断を行い、その後、肺病変(SSc-ILDなど)、皮膚、各臓器の重症度分類を行います。
注: オフェブの効能効果は、特発性肺線維症ならびに全身性強皮症に伴う間質性肺疾患です。皮膚病変等の全身性強皮症に伴う間質性肺疾患以外の臓器病変に対する本剤の有効性は示されておりません。
日本におけるSSc診断基準
2016年に発表された全身性強皮症診断基準・重症度分類・診療ガイドライン1)に基づき、大基準である両側性の手指を越える皮膚硬化を満たせばSScと診断されます。

大基準を満たさない場合は、以下の5つの小基準について、①および②~⑤のうち1項目以上を満たせばSScと診断するとされています。
SScの診断基準
大基準 両側性の手指を越える皮膚硬化
小基準
1
手指に限局する皮膚硬化*1
2
爪郭部毛細血管異常*2
3
手指尖端の陥凹性瘢痕、あるいは指尖潰瘍*3
4
両側下肺野の間質性陰影
5
抗Scl-70(トポイソメラーゼI)抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体のいずれかが陽性
除外基準
右の疾患を
除外する
腎性全身性線維症、汎発型限局性強皮症、好酸球性筋膜炎、糖尿病性浮腫性硬化症、硬化性粘液水腫、ポルフィリン症、硬化性萎縮性苔癬、移植片対宿主病、糖尿病性手関節症、Crow-Fukase症候群、Werner症候群
診断の判定 大基準、あるいは小基準①および②~⑤のうち1項目以上を満たせば全身性強皮症と診断する
*1 MCP関節(中手指節間関節)よりも遠位にとどまり、かつPIP関節(近位指節間関節)よりも近位に及ぶものに限る
*2 肉眼的に爪上皮出血点が2本以上の指に認められる†1、またはcapillaroscopy(毛細血管顕微鏡検査)あるいはdermoscopy(皮膚鏡検査)で全身性強 皮症に特徴的な所見が認められる†2
*3 手指の循環障害によるもので、外傷などによるものを除く  
SScの診断基準(図)
皮膚硬化の範囲による分類
SScと確定診断された場合、皮膚硬化の範囲による分類を行います。
びまん皮膚硬化型SSc(diffuse cutaneous SSc:dcSSc) は、皮膚硬化が肘関節より体幹側に至るものとされ、SSc患者の約30%を占めます。
限局皮膚硬化型SSc(limited cutaneous SSc:lcSSc) は、皮膚硬化が肘関節より遠位にとどまるものとされ、SSc患者の約70%を占めます2)。また、dcSSc/lcSScの臨床経過には差がみられることも報告されています。
皮膚硬化の範囲によるSScの分類3)
びまん皮膚硬化型SSc
diffuse cutaneous SSc(dcSSc)
限局皮膚硬化型SSc
limited cutaneous SSc(lcSSc)
皮膚硬化の範囲 肘関節より体幹側に至る 肘関節より遠位(手、顔、足、前腕部に限局)
レイノー現象と皮膚硬化の発現 皮膚硬化が先行し、1年以内にレイノー現象の発現がみられる レイノー現象の発現が先行し、数年(10年以上の場合も)経過後に皮膚硬化が生じる
腱摩擦音の有無 あり なし
主要臓器病変 間質性肺疾患、乏尿性腎不全、消化器障害、心疾患などが早期より発現 肺高血圧症、三叉神経痛、皮膚への石灰沈着、毛細血管拡張など
発現する主な自己抗体 抗トポイソメラーゼⅠ抗体 抗セントロメア抗体
爪郭部毛細血管の症状 爪郭部毛細血管の拡張・脱落 爪郭部毛細血管の蛇行・拡張(通常、毛細血管の脱落を認めない)
LeRoy EC, et al.: J Rheumatol 1988; 15(2): 202-204.より改変作表
dcSScの進行は急速で発症から3年間の疾患活動性が顕著であるのに対し、lcSScの進行は緩徐で、発症から10年以上経って臓器病変が初発することもある、といった点も異なります2)
自己抗体とSScの病態との関連
検査で検出される自己抗体とSScの病態について、以下の報告がなされています4,5)
自己抗体の発現とSSc病態との関連
抗体 SSc病態との関連
抗トポイソメラーゼⅠ抗体
(ATA)
・SSc患者の約25%で検出される
・陽性例の7割はdcSSc、3割はlcSSc
・発現例では間質性肺疾患(ILD)をきたし重 症化することが多く、最も予後不良
抗セントロメア抗体 ・SSc患者の約20%で検出される
・陽性例の約95%がlcSSc
・他の膠原病や健常対照でも約30%で陽性になる
抗RNAポリメラーゼⅢ抗体 ・SSc患者の約5%で検出される
・陽性例の90%以上がdcSSc
・強い皮膚硬化を認める
抗U1RNP抗体 ・SSc患者の約20%で陽性となり、lcSScの割合が高い
・陽性例で肺動脈性肺高血圧症、関節炎、筋炎などを認める
・混合性結合組織病では必ず陽性。全身性エリテマトーデス、多発性筋炎/皮膚筋炎でも陽性となる場合がある3)
抗U3RNP抗体
(保険未収載)
・SSc患者の4~10%で検出され、dcSScの割合が高い
・ILDや手指潰瘍・壊疽、肺高血圧症、腎クリーゼなどを認める4)
さらに、X線検査やHRCT、心電図、呼吸機能検査などにより各臓器病変の重症度を評価します1)
日本の重症度分類
全身性強皮症診断基準・重症度分類・診療ガイドライン1)において、各症例の重症度は①皮膚、②肺、③心臓、④腎、⑤消化管のうち最も重症度スコアの高いものとされています。各臓器の重症度は、0(normal)、1(mild)、2(moderate)、3(severe)、4(very severe)の5段階で評価されます。
肺病変
肺病変(SSc-ILD)については、次のような判定基準で重症度分類がなされます。
以下の胸部高分解能CT(HRCT) 5スライスにおいて、ILDと関連する全ての陰影(すりガラス影、網状影、蜂窩影、嚢胞影)の占めるおおよその面積比を求め(5%単位)、それらの平均を病変の広がりとします。
※ HRCTによる肺病変の評価については、[➡SSc-ILDの臨床/検査]をご参照ください。
重症度分類で用いるHRCT5スライスの例
胸部HRCT下の病変の広がりと努力肺活量(FVC)、酸素療法の有無を組み合わせて重症度を判定します。
肺病変の重症度分類アルゴリズム
皮膚病変
皮膚硬化については、modified Rodnan total skin thickness score(mRSS、スキンスコア)により重症度が評価されます。
※ mRSSによる皮膚病変の評価方法については、[➡SSc-ILDの臨床/検査]をご参照ください。
皮膚硬化の重症度分類基準
mRSS
0(normal) 0
1(mild) 1~9
2(moderate) 10~19
3(severe) 20~29
4(very severe) >30
「全身性強皮症診断基準・重症度分類・診療ガイドライン」日皮会誌 2016; 126(10): 1831-1896.
©日本皮膚科学会
海外における診断基準
2013年に発表されたACR/EULARによる「全身性強皮症分類基準」6,7)では、症状に応じたポイントの合計が9以上でSScと診断されます。手指硬化がMCP関節を越えて近位まで存在する場合(近位皮膚硬化)、他の項目に関係なくSScと診断されます。
ACR/EULARによる全身性強皮症分類基準(2013年)
項目 副項目 ポイント
手指硬化がMCP関節を越えて近位まで存在(近位皮膚硬化) 9
手指の皮膚硬化
(ポイントの高い方を採用)
手指腫脹(puffy fingers)
MCP関節より遠位に限局した皮膚硬化
2
4
指尖部所見
(ポイントの高い方を採用)
手指潰瘍
指尖陥凹性瘢痕
2
3
爪郭部毛細血管異常 2
毛細血管拡張 2
肺病変
(いずれか陽性)
肺動脈性肺高血圧症(PAH)
間質性肺疾患(ILD)
2
2
レイノー現象 3
SSc関連自己抗体
(いずれか陽性)
抗セントロメア抗体
抗トポイソメラーゼⅠ抗体
抗RNAポリメラーゼⅢ抗体
3
van den Hoogen F. et al.: Ann Rheum Dis 2013; 72(11): 1747-1755.
その他、手指の皮膚硬化、指尖部所見、爪郭部毛細血管異常、毛細血管拡張、肺病変、レイノー現象、SSc関連自己抗体の合計ポイントによって判断されます。手指に皮膚硬化がない例、臨床所見を説明できる他疾患を有する例には本基準を適用しないとされています6,7)

※ 腎性全身性線維症、汎発性限局性強皮症、好酸球性筋膜炎、浮腫性硬化症、硬化性粘液水腫、肢端紅痛症、ポルフィリン症、硬化性苔癬、移植片対宿主病、糖尿病性手関節症など
【文献】
    1. 全身性強皮症 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン. 日皮会誌 2016; 126(10): 1831-1896.
    2. 全身性強皮症診療ガイドライン作成委員会.: 日皮会誌 2012; 122(5): 1293-1345.
    3. LeRoy EC, et al.: J Rheumatol 1988; 15(2): 202-204.
    4. 濱口儒人. Ⅲ-3 自己抗体の臨床的意義. 佐藤伸一編. 強皮症の基礎と臨床. 大阪: 医薬ジャーナル社; 2016: 92-99.
    5. 長谷川稔. Ⅲ-4 病型分類と自然経過. 佐藤伸一編. 強皮症の基礎と臨床. 大阪: 医薬ジャーナル社; 2016: 100-107.
    6. van den Hoogen F. et al.: Arthritis Rheum 2013; 65(11): 2737-2747.
    7. van den Hoogen F. et al.: Ann Rheum Dis 2013; 72(11): 1747-1755.